東京パワー

 今回の東京行の主目的はコンサドーレ浦和レッズ観戦だが、東京は直ぐ副目的が見つかるのがいい。娘と待ち合わせ、そのうちの一つ東山魁夷展を観た。すごい人だ。前日に十万人目の入場者が出たと言い、この人出だ。東京の人口、東京の吸引力に改めて驚く。観終わって北の丸公園から九段まで歩こうと言うことになり武道館の前を通った。するとそこには聞いたこともない歌手名の看板が掲げられ、リハーサルでもしているのだろうか中からロックの音が洩れていた。驚いたのはそこにも長蛇の列が出来ているのである。まだ開場前らしく、歩道にシートを敷いて盛り上がっているグループもあれば、寝ている若者もいる。向こうにはグッズ抱えるくらい買って満面笑みの娘もいれば、それを買うための列も大きな城門のところまで延びている。気がついて地図を見たらこの城門が田安門らしい。江戸城の頃はこの田安門が武士を飲み込んだのだろうが、今は若者が門を飲み込みそうだ。東京の人が中心だろうが地方からこのために出てきている人も多いのだろう。函館からわざわざサッカーの試合を観に来た男が言うのもおかしいが人という東京パワーと人をひきつけるパワーが今ほど全開になっているときはないような気がした。
 田安門を出て、牛が淵にかかる橋で少し展望が広がった。わずか1kmも離れていない二つの地点が現したパワーに驚いていられない。ここから四方に広がる東京という面を考えるとそこに住む人たちの営みが生み出すエネルギーはきっと宇宙からも見えるほどなのだろうと思う。昔、バングラディシュの首都に乗り継ぎで立ち寄ったことがある。空港から見ただけだが函館ほどの光も無かった。しかしその函館に出来るイベントの列もせいぜいミミズくらいのものが1年に2、3回だろう。
 歴史はパワーの集中を長続きさせず権力を変え都を変えてきた。東京はどこかに変わるのだろうか。歴史の必然を覆すほどのパワーをもつのだろうか。
 橋の上には、スケッチブックを広げ、水彩を描いている人が十人以上並んでいた。