二股岳・水

 残念ながらゲートには鍵が掛けられていた。いつも思うが、歩きに来ているのに車が使えないとなるとがっかりする。どういう心境なのだろう。歩き出すと冬めく林道の様子を結構楽しんでいるのに。
 昨夜まで続いた雨がいっせいに谷に向かっている。その場その場ではただ低い方へ低い方へと流路を選んでいるのだろうが、水の来し方、行く方を見ると明確な目的を持っている獣のようにしっかりとはるか下方の谷へ落ちるように下っていく。
 落ち葉が林道下の導管を塞いでいるのだろう沢水が小さなダムとなり林道に溢れ出している。その水が轍を流れ、削り、今は深さ30cmはあろうかと思われる溝を掘って道路を走っている。道路に流れ出た水は傾斜がきつい所は道路が最も流れやすい。削った小石を運び終わり、路面が平らになったところで始めて、谷をめがけて草むらに隠れるように流路を見つける。
 二股の頂上から対面する毛無山を見ると、あの桧沢の瀧が見える。山肌の木が落葉したせいもあるのだろうが、普段より水量が多いからだろう。毛無山からも水が逃げ出していた。まるでまごまごしていると凍ってしまって一冬山に閉じ込められることを怖れてでもいるようだ。ついでに山中の水分を誘い出すように水が流れ出している。そのせいか、周りの山々の尾根を覆う笹まで乾いた音で騒いでいるように聞こえる。
 紅葉し、落ち葉することだけが冬への兆しではない。山水も冬を感じさせていた。