三森山のアイヌネギ採り

 もし、人間を狩猟型と農耕型に分けるとすると、私は農耕型だと思っている。猟銃で獣を打つことを非情だと感じたり、それ以前に獣に相対することを恐ろしいと思ってしまうような気がする。有るか無いかはっきりしない所で獲物を探すことを非効率的だと思ったり、その時間を無駄だと思ってしまう。その証拠に、私は獲物を探すのが極端に下手だ。筍は目の前にあるものさえ目に留められないし、茸になったら探しているつもりでも足で踏んで歩いていたりする。今まで自分の手で取った茸はほとんど他の人に指差し教えてもらって採ったことが多い。目標があって探しているときでさえ見つけられないのだから、通りすがりに筍を見つけるなんてことはほとんどできない。「これだけ山に行ってるんだから好きなだけ山菜食べられるんでしょうね」と言われ、ほとんど食べていない」と答えるとあきれられる。船に乗っての魚釣りは一回で行く気をなくしたし、チカ釣りは入れ食いでつれているときにだけしか行かない。ほとほと獲物を戦いとる能力、気力に欠けている。かといって農耕に自信があるわけではない。どちらかに分けるとすればと言う程度でしかない。きっとサバイバルではすぐ落伍して、生きていけない筆頭だろう。
 そんな私が、アイヌネギ採りだけは積極的になる。横浜に住む妻の兄から頼まれていることもあるが、アイヌネギでのジンギスカンを食べなければ遣り残したことがあるようで落ち着かない。いつものメンバーの山行のスケジュールに入れてもらって昨日行ってきた。三森山である。尾根に登るまで急登が続くが、下から見える三つのポコを尾根伝い辿り、登山口から30分で山頂である。
 その後、昨年採った場所に入っていくとやはりアイヌネギは眼に入ってこない。Saさんは急斜面を下りて行き、すぐ「いいアイヌねぎがあるわ」と声がする。やっといい感じのアイヌネギが眼に入ってくる。よく見れば葉が出たばかりで一番味のいい時期のものがびっしり出ている。なぜ見えなかったろうと思うほどの群落だ。そして太い。夢中で取り出した。また悪い癖で、採りながら、他のもっといい場所を探してすぐ移ってしまう。だから取り残しが多い。それでも採りきれないほどあるから十分採れた。
 何のことは無い、探す努力の必要としない狩なのである。あるところに行って探す苦労の無いところで狩をする。狩猟に向いている向いていない以前の収穫作業である。それでも意気揚々と帰ってきた。