横津最奥アンテナ・七飯スキー場中間点

 七飯スキー場のゲレンデを登るとゲートからの舗装路が除雪されていた。高いところでは2M以上の壁になっている。車線も一車線がやっとで、私たちはその谷側、飛ばされた雪粒の上をつぼ足で歩いた。時折晴れるガスを通してドームアンテナが見えるところまでくると1台のブルが雪を吹き上げて道幅を広げてる。たった1台一人でやっている。広い横津の頂上台地では雪煙まで孤独に見える。邪魔にならないようにブルの手前で壁を降りよじ登って左側の雪原に渡った。頂上に向かっていると、除雪された溝のような道を歩いてくる人がいる。以前しょっちゅう横津、袴腰に来ていた、私とは俳句仲間のFUさんだった。74,5才になると思う。ひざの調子がよくなく昨年は思うように登れないと言っていたが、復活はめでたい。
 ガスと強風の中、最奥のアンテナに1時間半で着いた。少し早かったが、アンテナ建物への入り口アプローチの階段の所で風を避けて昼にした。そのうち心配していたガスが晴れた。
 横津に来るたびに最奥のここまでくるし、くれば小さく見える七飯スキー場のゴンドラ降り場の建物を眺める。以前Yaさんが中間点あたりを指差して「七飯スキー場からあがってあの中間点あたりの鞍部まで滑り、沢の上を巻いてスキー場の駐車場まで滑ったんだ」という話を聞いたときから歩いてみたいポイントだった。冬でなければ来れない。
 鞍部めがけてYaさんKuさんは滑って行く。私はスキーの邪魔にならないように、雪を確かめながらスノーシューを踏み出しす。堅くなった上に降ったのか解けたのか湿った雪が張り付いている。堅い部分がしっかり支えてくれる実感があり抜き足差し足から普通に歩き、すぐ、大股のドカドカ歩きになる。確かにスキーは面白いに違いない。私も山スキーが滑れたらなーと思う。でも、このドカドカ歩きも面白い。雪から突き出た木があるだけでなだらかな雪面は何の心配もなく顔を上げて歩ける。下りだから体力も必要ない。脚を下ろすだけでいい。普段の生活ではもうすることもないドカドカ歩きを思い切り楽しめる。加えて、私のこのあたりの山歩きのもうひとつの楽しみ、「いろんな方向からの駒ケ岳写真」の撮影にしてもいつでも停まれて、微妙なアングル選びができる利点がある。スキーの二人は雪質のせいか、林間のせいか、私を気遣ってかところどころで滑りを止めてつかずはなれず滑ってくれている。快適な雪原くだりが鞍部で終わり、登りになる。登りになるとスノーシューの得意分野。1035Mポコまで一気に上った。
 足元から下る急勾配に続き尾根伝いのなだらかな部分に七飯スキー場のゴンドラ降り場が見える。文字通り指呼の間にある。風もなく、青黒いような空に早春の光があふれている。なんとなく動きたくなくなってしまう。
 帰りは、最奥のアンテナに登らず、七飯側を巻くコースをとった。最初は調子よかったが、5Mほどの急斜面を登るときに、スノーシューの欠点が出てしまった。先を行くYaさんは、スキー階段歩行で難なくこなして行く。しかし私は、雪面にフラットに足を置くと表面の雪もろともずり落ちるし、かかとを固定してつま先でステップを切ろうとすると堅くて入って行かない。2度ほど転び、最後にはスノーシューがはずれてしまった。結局つぼ足で時折膝まで沈みながらその斜面を登りきり、またスノーシューを履いた。こういうときの体力消耗は激しい。軍手もずぶぬれになってしまった。今後はあらかじめ急斜面を巻くコース取りが大切になる。
 除雪はまだ孤独な雪煙を上げていた。再び車道に降りよじ登って斜面を変え、二人は滑りを、私はドカドカ歩きを楽しみながらゲレンデ下の駐車場を目指した。