庄司山北側尾根・動物

 雪のため最も手前の送電線付近に車を止め歩き出した。左右は広い畑地が広がる。と言っても冬、当然白一色の雪の原だ。そこに一匹の狐がうろついている。目的地があって一直線に移動しているのではない。あっちへうろり、こっちへうろり。突然跳びはねて方向転換したと思えばしばらく立ち止まって雪に鼻を突っ込んでいる。大きく見れば里から山の方へ動いているが、その動きだけ見ていると酔っ払っているか精神に異常をきたしているかのような動きである。冬の狐、当然餌を探しての行動だろうが、狐にしてみれば切実であろう。
 時折日も射すが雲が多く細かな雪もちらつく天気である。昼近くには晴れると言う予報に期待しながら大川射撃場手前からトラバース路のスノーモービル跡を辿って蒜沢へ降り、庄司山の北側尾根を登り始めた。先々週庄司山の下りに使ったスノーモービル跡だ。下りだったので分からなかったが、結構な登りだ。スノーモービル跡に誘われるように台地上の尾根を高みへ高みへ進んだ。ガスがかかり始め、視界が利かない。ただ歩くだけになってしまった。それでも今日の最終ポイント蒜沢の源流部分を踏み、12時地点で昼にした。雪に風がつき植林で風を避けながら飲んだ熱いお茶が美味しかった。 
 ガスに加えて吹雪き模様、Yaさんはそうでもないらしいが先頭になった私は心配で帰りは急ぎ足になった。来た時の自分たちの足跡を外さないように目を凝らして歩く。吹雪が後十分も続けば消してしまいそうな足跡である。ましてやガスで暗く、雪に陰影がない。その足跡の上に別の足跡が乗っかっていることに気がついた。ウサギの足跡だ。足跡からすると今つけられたばかりの足跡だ。これも出がけの狐と同じで一直線に歩いていない。左の斜面に登るようにそれてはまた我々が往路につけたトレースに戻ってくる。何度も繰り返されている。何をしているのかとウサギの心理を推察していると、突然Yaさんが「うさぎだ」と叫んだ。私の目の前5mほどの所を、左の方から右の谷斜面へ白い冬毛のウサギがしなやかに体を伸ばしながら三回ほどのジャンプで実を躍らせた。
 吹雪きでもなければ行方も見たかったけれどそのままどさどさ歩き続けた。そしてうさぎの気持を改めて考えた。突然、どさどさ歩いてくる人間どもから左斜面に逃れようとしたけれど斜面が急で引き返し、また左に逃げようとして引き返し…せっぱつまってわが身を人目に曝す危険を冒して右側の谷斜面へ向かったのだろう。それは必死の足跡だったのだ。
 ウサギを驚かせた罰が当たったのか、眼鏡は雪だらけ、体は汗と雪でムレムレ、デジカメまで曇ってしまった。水分の多い雪はスノーシューにくっつき敗残兵さながらの格好で車にたどり着いた。
 景色が楽しめなかった分、狐とウサギが心に残った。暖冬だろうがなんだろうが山の動物は必死で生きているんだろうと考えた。熊も…。