ぶたな

散歩コースの途中にケーブル放送やネット関連を扱う「NCV」という会社の社屋があり、その一角の公園にぶたなが一面に咲く原っぱが作られている。近所の保育園のお散歩目的地になっている。保育士さんがぶたなを輪にして冠を作り始めると、園児たちがぶたなを折り取っては次から次へと保育士さんに差し出す。保育士さんは「ありがとう」「きれいだね」などと言いながらも目は子どもの様子を窺っている。ぶたなと園児よく似合う。

 ぶたな野や走る園児の青帽子   未曉

函館の6月と言えば運動会だった。子どもの頃走るのが遅かったから徒競走は嫌だった。兄たちからはその度に「またげっぱだべ」と言われ続けていた。だから私の運動会の目標は「げっぱにならないこと」だった。そのためによいと言われたことはなんでもやった。そのひとつにタンポポの花を脛に塗りつけるというのがあった。わたしは一生懸命塗って塗って脛が黄色くなるまで塗って練習した。私のライバルたちもやっていただろうが私は彼らよりもたくさん塗ればいいだろうと思っていた。その甲斐あってか4年生くらいからはげっぱではなくなった。6人走れば4位とか5位とかになった。そして誰からも何も言われない少し淋しい徒競走になった。そういえば6人中5位の場合を「げのまえ」と言っていた。

 

 函館弁「げっぱ」=びり。速さを競うときに最も遅いこと。「げれっぱ」とも言う。

    関連・「げのまえ」=げっぱのひとつ前。6人であれば5位。