胡瓜
腰掛け作りを思いついた。
私にとっていわゆる至福の時間がある。夕方四時頃からの「一杯のみ」である。本州が梅雨の頃の北海道の夕刻は、寒いくらいになる夜までの間が最高である。午後からは日陰になるウッドデッキに半袖短パンのだらしない格好で、夕べの残り物で焼酎に氷の音をさせて飲む「至福」である。しかしその邪魔をするものがある。胡座の腰が痛くなる。奥さんは「腰掛け買ってくれば?」というが、折角の手作りのウッドデッキでの「一杯のみ」けばけばしさや雨ざらしがもったいないようなものでは「至福」が削がれる。我慢しながら飲んでいた。
腰掛け作りを思いついた。一月前のテーブル天板塗り直しに次ぐ自粛記念第二弾である。物置をあさってウッドデッキの端材と使わなくなった俎を調達した。
船大工の義父が娘たちに作った踏み台を参考に、俎を半分に切りそれを脚にした。私が体重を乗せてもびくともしない腰掛けになった。腰は楽だし立ち上がっても腰はすぐ伸びる。
予定ではコンサドーレも勝って祝杯となるはずだったが、奥さんと二人菜園を見ながら「至福」の宵を過ごした。明日あの曲がった胡瓜が食べられそうだ。
胡瓜生る伸ばせば痛み走る腰 未曉
脛痩せてウッドデッキの胡座かな 未曉